サヨナラなんて言わせない
「まず、涼子さんの体調が完全に戻るまではお世話させてください」

「な、何言って・・・・」

「それから、涼子さんが元気になって落ち着いたら・・・・・」

一旦言葉を切った俺の顔を不安そうに涼子が見つめる。

たとえ君がどういう受け止め方をしようとも、俺はもう逃げない。
真実を全て話すんだ。

一度ゆっくり深呼吸をすると、真っ直ぐに彼女を見据えて言った。

「その時は僕の話を聞いてもらえませんか?」

「・・・・・え?」

「僕の話を聞いて欲しいんです。お願いします」

その瞬間彼女にも緊張が走ったのがわかった。
息を呑む音すら響くほどの静寂が俺たちを包み込む。
だが互いに寸分たりとも視線を逸らすことはない。
じっと見つめ合ったまま動かない。

もしかしたら君は何か勘づいたかもしれない。
ちゃんと全てを話すから。どうかそれまで待って欲しい。

「・・・・・わかった」

やがて彼女も決意したように静かに頷いた。
俺ときちんと向き合おうとしてくれるその誠実さに胸が震える。
俺はそんな彼女にありがとうと言って心からの笑顔で微笑んだ。
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