サヨナラなんて言わせない
「涼子さんは・・・大丈夫なんですか?」

「まだ少し熱がありますけど、おそらく明日には下がるかと。彼女の性格ならきっと明日は何が何でも仕事に行くと思います。本当はあと一日くらい無理しない方がいいんですけどね」

俺は涼子のことは熟知していると思わせるようなことを言葉の端々に含んで話した。案の定、男の目が鋭く光る。男がどう出てくるか、俺はその出方を待った。

「そうですか・・・。週末に俺と出かけたときも様子がおかしいと思ったので何度も休むように言ったんですけど、彼女どうしても出掛けたいって言って・・・・。彼女、無茶するところが困ったところですよね。でも俺がちゃんと休ませておけばよかったって後悔しています」

男は射貫くような目を俺に向けてそう言った。
彼は俺の宣戦布告に乗ってきたのだ。
俺の牽制に対してそれ以上の牽制を向けてきた。


涼子にそのつもりはないのかもしれないが、彼は本気だ。
・・・・彼女を愛している。

それがはっきり証明された瞬間だった。
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