サヨナラなんて言わせない
涼子と割り切った関係をもっているという男。

初めて見たときも思ったが、彼は涼子よりもやはり年下のようだ。
おそらく会社の後輩なのだろう。
すらっとした長身にモデル顔負けの端正な顔立ち、
普通の女なら喜んで付き合いそうなタイプの男だった。

俺自身もこの見た目のせいで自分の意思とは全く関係なしに幾度となく女性に言い寄られることがあったが、きっと彼も同じ人種に違いない。
そんな彼をもってしても彼女の心は手に入れられない。

そう、彼女は人の見た目なんて全く眼中にない。
昔、もしも俺が見た目を武器に彼女を口説きでもしていたならば、絶対に彼女が俺に振り向いてくれることはなかっただろう。
彼女はそういう人なのだ。
そしてそれは今も変わっていない。


・・・・そんな彼女が割り切った関係をもつ理由。


それは間違いなく俺だ。


俺が彼女をズタズタに傷つけてしまったせいで、おそらく恋愛というものに信用がおけなくなってしまったのだ。
・・・・昔の俺がそうだったように。
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