サヨナラなんて言わせない
カタン・・・

ぐるぐる考え込んでいると玄関から物音が聞こえてきた。
彼女が帰ってきたんだ!
俺は急いで玄関まで走って行った。
だがそこで予想だにしない光景を目にすることとなる。

「・・・・え?」

互いにその一言だけを発して動かなくなってしまった。

相手は涼子さんじゃない。
彼女よりも幾分若く見える端正な顔立ちの男性がそこには立っていた。
そんな彼に支えられるように彼女はすやすやと眠っている。

「え、あ、あの・・・・?」

まさか家に男がいるとは夢にも思わなかったのだろう、
その男性はひどく困惑した様子で俺に声をかけてきた。
ハッと我に返ると、慌ててその場を取り繕った。
せめて彼女に迷惑がかからないようにしなければ。

「あ、私は今事情があってこちらでお世話になってる者です」

「あ、そうなんですか・・・・」

納得のいかない顔だがなんとかそんな返事が返ってきた。
当然だろう。大人の男と女が一つ屋根の下にいるなんて、恋人でもなければ納得できる人などいないに決まってる。
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