サヨナラなんて言わせない
崩れ落ちた希望
「あら!随分お久しぶりですね、南條さん。お仕事が忙しかったんですか?」
ぼんやりとした思考にふとどこからか声が聞こえてくる。
ゆっくりと顔を上げると視線の先に見知った顔があった。
「・・・・・山本さん・・・・?」
どうして彼女がここに?
・・・・・違う、俺がいつのまにここに?の間違いだ。
気が付けば、俺は自宅のあるマンションへと帰ってきていたらしい。
どうやってここまで辿り着いたのか、全く覚えていない。
ここに入るセキュリティだっていつの間に解除したのか、全く思い出せない。
「南條さん・・・?どうされたんですか?なんだかもの凄く顔色が悪いですよ?こんな時間だし、相当お仕事が大変なんですか?」
青白い顔をして無言で突っ立っている俺が心配になったのか、このマンションのコンシェルジュの一人である彼女は次々に言葉を並べていく。
「・・・・いえ、大丈夫です。・・・・・今日は疲れたのでもう休みますね。おやすみなさい」
なおも心配そうな顔で俺を見つめる彼女をその場に残し、俺は力なく歩き出した。