サヨナラなんて言わせない
エレベーターを降りるとフラフラと歩いて扉を目指す。
やがて目的の場所に辿り着くと、己の右手を見下ろした。

いつの間にか手にしていたカードキー。

・・・・彼女に渡すために常に肌身離さず身につけていたもの。

俺はいつの間にこれを手に取っていたのだろうか。


セキュリティにキーをかざすと、ガチャンという音をたててすぐに扉が解除された。
鉛のように重い体を動かして室内へと足を踏み入れる。

二週間ぶりに帰って来たその場所は、最後に過ごしたときと何一つ変わらずガランと無機質なままだった。


『いつか俺が家を設計して涼子が内装をデザインする』

二人でずっと語り合った夢。


涼子と別れてからの3年間、その想いは変わらなかった。
実現させるために必死で走ってきた。

・・・・そうして、数ヶ月前にその夢の一部をこうして叶えることができた。
あとは涼子に全てを話して彼女をここに迎え入れるだけだった。
たとえどれだけ時間がかかろうとも。

それなのに・・・・
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