サヨナラなんて言わせない
何故彼女は俺の記憶が戻ったことに気付いたんだ?

確かに今朝俺は彼女に気付かれてもいいと思って意味深な発言をした。
だが、それが原因だとはどうしても思えない。
もし俺の言葉がきっかけで気付いたのならば、あんな態度にはならないはずだ。
戸惑うことはあっても、あんなに黒いオーラを纏うようなことには・・・・


では何故?
いったいいつどこで?
今朝までは何も変わったことはなかった。
帰宅するまでに一体何が?

それに、俺のことを知っているのはカナくらいしか・・・・




そこでハッとする。

『カナさんが首を長くして待ってますよ』



まさか・・・・

まさか岡田との会話を聞かれた?!

涼子は『カナ』を俺の浮気相手だと思い込んだままだ。
その上であの会話を聞いたのだとしたら・・・・


「クソっ!!」

ガンッ!と思い切り握りしめた拳で壁を叩きつけた。
みるみる手には血が滲んでくるが痛みなど感じない。
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