サヨナラなんて言わせない
初めて入る彼女の部屋。
とても綺麗に整理されていて、物は少ないがとてもセンスのいいインテリアで纏められていた。

「そういえばインテリアの仕事してるんだっけな」

彼女の雰囲気によく似合った部屋はとても居心地がよかった。

彼女をゆっくりとベッドに寝かせると、申し訳ないとは思ったがスーツの上着だけは脱がさせてもらった。皺にならないようにハンガーに掛けると、もう一度彼女のもとへ行ってそっと声をかけた。

「おやすみなさい、涼子さん」

すやすやと眠る彼女を見ていると心が安らぐ。
やはり彼女は自分にとって大切な人なのだ。

そっと部屋を後にすると、いつも寝床にしているソファーに座って色んな事を考えた。
何故自分は記憶を失ってしまったのか、
彼女と自分の関係は一体なんなのか、
そして・・・・・先程の彼を含めて彼女には恋人はいるのだろうか、
本人に聞けるはずもないことがずっと頭から離れず、結局この日もほとんど眠れぬまま朝を迎えた。
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