サヨナラなんて言わせない
朝食を作りぼんやりとソファーに座って彼女が来るのを待っていると、やがてリビングへと戻ってきた。俺は慌てて立ち上がるとあらためてさっきのことを謝罪した。

「あっ、さっきはすみませんでした」

「もういいから。同居人がいるのにノックもせずに入った私にも問題があったし」

そう言って彼女は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。

「でもなんで今日は朝風呂だったわけ?いつもそんなことしないでしょ」

それは・・・あなたのことを考えていたら眠れなかったんです・・・なんて言えない。

「あの・・・夕べ涼子さんが遅かったから心配で・・・それで」

「えっ、まさかずっと起きて待ってたの?」

「・・・すみません」

「いや・・・別に謝る必要はないし。でも私が遅くなっても何も気にせず勝手に寝てていいから」

「・・・でも・・・」

「私たちは何の関係もないでしょ?ただの期間限定の同居人」

ズキン・・・・

確かに彼女の言うとおりなのだろうが、彼女の放った言葉は鋭い刃となって俺の心に突き刺さった。
俺にとって彼女は大切な人だ。だが彼女にとってはそうじゃない。
そうはっきりと言われたようで苦しくなった。

「・・・・そうですね」

そう言うのが精一杯だった。
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