サヨナラなんて言わせない
フッと意識が浮き上がる。

太陽が差し込んでいた室内はいつの間にか暗くなっていた。

「あのままぐっすり眠ってたのか・・・・」

汗をたっぷりかいて体が気持ち悪い。俺は体を起こすとぐっしょりと濡れたシャツを仰ぎながらあらためて室内を見渡した。



あれから周囲の協力を得ながら駆け上ってきた階段。
そうして夢の一部を叶えることができた。

立派な室内は寂しすぎるほど閑散としていて、置いてあるのは極々最低限のものばかり。人が生活しているような温かみなど微塵も感じられない。
いつまでこの生活が続くのかわからない。

それでも、この家に色付けをできるのは涼子ただ一人。
彼女がいないのなら中身などどうでもいい。


いつか彼女がここにやって来るまで、俺はただ信じて待つだけ。

そう、他の男は関係ない。
信じるのは己の信念だけなのだから。



「涼子・・・・」



大きな窓からくっきりと浮き上がる満月を見上げながら、俺は彼女の姿を想った。
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