サヨナラなんて言わせない
「会えたのか?」

何も答えない俺を横目に、森さんは賑わう会場を見渡しながら言った。

「・・・・はい。でも俺がバカだから、更なる誤解を与えてしまいました。・・・・話を聞いてもらうことすらできません。ほんと駄目男ですね、俺って」

「・・・・・難攻不落のモテ男の本命はさらにその上をいくってわけか」

自嘲する俺を見ながら森さんがフッと笑う。

「今回のことは知ってるのか?」

「いえ、それどころか俺が独立したことすら知らないと思います。・・・多分、俺のことがあってこっちの話は避けてると思うので」

「そうか・・・・」

「もともと見た目とかステイタスでどうこうできる女性じゃないんです。仮に知ったとしても驚くくらいでそれ以上のことは何も変わらないでしょうし」

フーッと息を吐き出す。

「彼女に再会して無我夢中になりすぎてたんですよね、俺。だから少し時間を置いてどうするのがいいのか冷静に考えてみようと思ってるんです。どうすれば彼女に伝えることができるのか」

「・・・・・・」
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