サヨナラなんて言わせない
「あ、あたしこの後ちょっと買い出しにいってくるから」

「え？」

「最近ちょっと行けてなかったし、結構買いたい物もあるから帰りは夕方くらいになると思う」

手に持っていたボトルを口に含みながら彼女が突然そんなことを話し始めた。
一瞬迷いが生じたが、俺は思いきって言った。

「あの！僕も一緒に行っていいですか？」

「ブッ！！」

予想外だったのか、彼女は口に含んだ水を吹き出してしまった。

「だっ、大丈夫ですか？涼子さんっ」

慌てて駆け寄ると苦しそうにむせ返る背中を必死で摩る。

「ゲホゲホっ･･･ちょっと！急に変なこと言わないでよ！･････っ！！！」

すみませんと言おうとした瞬間、彼女がこちらを振り返る。
互いの顔があり得ないほど至近距離にあり思わず息を呑んだ。
彼女は驚きのあまり、凄い勢いで後ずさった。
次の瞬間、

「きゃあっ？！」

「涼子さんっ！」

テーブルの脚に引っかかってそのまま後ろに倒れてしまいそうになる彼女の体を咄嗟に掴むと、体を入れ替えるようにして抱き込んだ。
そしてまるでスローモーションのように二人の体は倒れていった。
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