サヨナラなんて言わせない
会いたい
***

「どのような家にしたいかという具体的なイメージはお持ちですか?」

「はい、とにかく光の差し込む明るい家にしたいんです。小さな家なのでなかなか難しいかもしれませんけど・・・」

「なるほど。他にはありますか?」

「あとは必ず和室を入れたいです。本当なら全部和室にしたいくらいなんですけど、さすがに夫がそれは駄目だというので・・・・でも全体的に和風な家にしたいと思ってます」

「和風ですか・・・」

「難しいですか?」

「いえ、とんでもありません。とても素敵だなと思っただけですよ」

ニッコリ笑って答えた俺の言葉に女性は嬉しそうにはにかむ。


今日は個人住宅の依頼主との初めての顔合わせの日だ。
30代半ばほどのご夫婦には小さなお子さんが一人。小さくてもいいからマイホームを持つのが夢だったと語る彼らの夢を叶えるのが俺の仕事だ。

「あの・・・正直かなりお高くなるんじゃないですか・・・?」

依頼主としては当然一番気になることをご主人が尋ねてくる。
< 230 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop