サヨナラなんて言わせない
「ご期待に添えなくて悪いが、何もないな」

俺は手を止めることなくあっさり答えた。予想外だったのかカナは驚いている。

「え・・・そうなの?だって、最近の司なんだか輝いてるわよ?」

「誰がだよ。気のせいだろ」

「本当よ!何て言うの?やる気が漲ってて・・・そう、目が生き生き輝いてるのよ。元々この仕事が好きだったのは知ってるけど、最近はそれだけじゃないっていうか・・・心から楽しんでる感じ?だからてっきり何かあったんだとばかり・・・違うの?」

俺は描いていた手を止めてバサリと机にノートを置くと、すぐ横の窓の外に視線を送った。公園通りに近いこの場所からは緑が多く見える。

「・・・本当に何もない。涼子と最後に会ってからもうすぐで2ヶ月になる」

「え・・・」

「手紙を出してから1ヶ月以上経つけど何の音沙汰もないな」

言いながら立ち上がって窓際に立つ俺にカナは何と言葉をかければいいのか途方に暮れている。俺はクスッと笑うと振り返った。

「別に慰めの言葉なんかいらないから。覚悟はしてたし、それに・・・・信じてるから」

「えっ?」
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