サヨナラなんて言わせない
・・・・
・・・・・・トクントクン・・・・・
あれからどれくらいの時間が経ったのか。
気が付けば涼子の涙も止まっていて、互いの鼓動だけが静かに響いていた。
今自分の腕の中にいる存在は、昔と何一つ変わらず小さくて温かい。
この手に抱きしめることをどれだけ夢見てきたことか。
力を抜いたまま俺にもたれかかっているだけでこんなにも満たされる。
抱きしめる手に力を込めると、その感触を確かめるように何度も髪を撫でた。
「涼子・・・・・」
俺の言葉に涼子の体がピクリと揺れる。
やがてごそごそと体を動かすと、その顔をゆっくり上げた。
「・・・・・・・ぷっ」
目が合った瞬間思わず笑ってしまった。
その余りの可愛らしさに。
涙でぐちゃぐちゃになっていることが、感情を露わにしてくれたことが嬉しい。
それは俺と向き合ってくれたことに他ならないから。
そんな目で睨んだって逆効果だ。
「可愛い」
笑ってそう言うと涼子の顔がみるみる真っ赤に染まった。
そんな純粋なところも何も変わってないじゃないか。