サヨナラなんて言わせない
「な、な、何言ってんの?バカじゃないっ?」

真っ赤な顔でそう叫びながら涼子は凄い勢いをつけて俺の腕から離れると、捕まえる暇も与えずに元いたカウンターへと逃げていってしまった。

・・・・ようやくこの手に捕まえることができたのに。
逃げていくなんて許さない。

「・・・・どうして逃げるの」

「に、逃げてないよ?元に戻っただけでしょ?」

一歩ずつ詰め寄る俺に涼子の顔が焦りで満ちていく。
徐々に近付くその距離にキョロキョロと落ち着かない視線が何かを捉えると、咄嗟に手元にあったものを掴んで俺に差し出した。

「こ、これっ!なんでここにあるのよ?!」

差し出されたものに視線を送る。それを見た瞬間笑いが零れた。
そしてそのまま差し出された手を掴んで一気に彼女の体を引き寄せる。

「ちょ、ちょっと・・・・!」

「そんなの決まってるだろ?俺と涼子で使うためだよ。この家は涼子が選んだ物で埋め尽くされていくんだから」

そう言うと再び戻って来た小さな身体をギュッと抱きしめた。
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