サヨナラなんて言わせない
「ちょっ、司っ、苦しいからっ・・・!」

「あっ、悪い・・・!大丈夫か?」

余りの強さに涼子が苦しげに漏らした声に我に返ると慌てて腕の力を緩めた。
涼子は何度も深呼吸を繰り返すと、ふっと顔を上げた。
その顔が俺の目の前で止まる。
互いの視線が絡み合い呼吸が止まるのがわかった。

俺は引き寄せられるように彼女へと近付いていく。


やがて柔らかなその唇に触れた。


ほんの少し触れただけのその場所から全身へと燃えるような熱が流れ込んでいく。
今この瞬間が永遠のようにも感じた。


そっと唇を離すと、彼女が蕩けそうな目で俺を見ていた。
きっと俺も同じような顔をしているのだろう。
彼女のそんな姿を見たら・・・・・もう止まることなんてできない。

人差し指でつっと紅い唇をなぞる。
艶めかしく動く指の刺激に耐えられなくなった涼子の唇が微かに開いた。
その瞬間を見逃さなかった。

「つか・・・・・んっ!!」

彼女の言葉ごと呑み込むようにその唇を再び塞いだ。
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