サヨナラなんて言わせない
胸元を押し返す手をすぐに掴むと、その手のひらを慈しむようにキスをする。
彼女の体がピクッと跳ねる。

「俺は落ち着いてるよ。今目の前にいる涼子が本物だって確かめたいんだ」

言いながら何度も何度もキスを落としていく。
視線は彼女から逸らすことはなく。
真っ赤に染まり戸惑いを見せる彼女に、
愛してる、君が欲しいという想いをこめて何度も何度も何度も。

「司、待って、だってさっき向き合ったばかりなんだよ?私た・・・」

「ずっと夢見てたんだ!」

突然声を上げた俺に涼子が驚きの色に変わる。

「・・・司・・・?」

「あの日から今日まで、毎日毎日、ずっと涼子のことを考えてた。夢を見てた。
気が狂いそうなくらい、ずっとずっと涼子がこの手に戻ってきてくれることを夢見てたんだ・・・・」

自分でも何やってるんだってわかってる。
それでも今目の前にいる君が夢じゃないってことを実感したい。

心で、体で、君の全てを感じたい・・・


縋るように涼子の首筋に顔をうずめて動かなくなってしまった俺を、
やがて涼子は真綿で包むように抱きしめた。
情けない顔を上げた俺を見て苦笑いすると、その顔が徐々に近付いてくる。
そっと触れた唇に俺の最後の理性は完全に崩壊した。
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