サヨナラなんて言わせない
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太陽が差し込んでいた室内に注ぐのはいつの間にか月明かりに変わっていた。
聞こえるのは乱れた呼吸と啜り泣きにも似た彼女の声だけ。


「・・・・・っ、もう、ムリっ・・・・!」

そう言って逃げようとする体をすかさず捉える。
上から覆い被さるように動きを封じ込めると、涙目で振り向いた顎を捉えて唇を落としていく。もう幾度となく貪ったその唇は真っ赤に染まり、少しも乾くことなくしっとりと濡れたままだ。

「まだだよ・・・・・まだまだ、全然足りないっ・・・・・!」

「う、うそ・・・・っあ、あぁっ・・・・・!」



唇で、体で、心の全てで彼女を感じていく。

ここにいる彼女は夢なんかじゃなく現実なのだと。

彼女が俺の元に戻ってきてくれたのだと。


それを実感するために何度も何度も何度も彼女を味わう。





「涼子・・・・・涼子っ・・・・・!!」




もうずっと忘れていた人肌のぬくもりに、触れた先からたちまち甘く痺れる彼女の全てに、俺は何処までも溺れていった。
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