サヨナラなんて言わせない
「なんで?そんなの涼子を待ってたに決まってるだろ?どうして黙っていなくなったりしたんだ。起きたら涼子がいなくて俺がどれだけ焦ったと・・・・俺はまた夢でも見てたんじゃないかって・・・」

またあの悪夢を繰り返すんじゃないかと怖かったなんて、
きっと君にはわからないだろう。
それほどに君を求めていたということも。

俺が君が思っている以上に君を愛しているということも。

君はまだわかっていない。


「ご、ごめん。でも時計を見たらもうあり得ない時間になってて・・・司は熟睡してたし、また後で連絡すればいいって思ってた。でもよく考えたら連絡先も知らないって後から気が付いて・・・」

「今日一日生きた心地がしなかった。また涼子がどこかに消えてしまうんじゃないかって」

「ご、ごめんね?そんなつもり全然なかったんだけど、ほんとにごめんなさい」

本当は彼女が悪いわけじゃないのに、嫉妬に狂った俺の暴走は止まらない。

「仕事を早く切り上げてここで待ってれば涼子はこいつと出てくるし、おまけにイチャイチャ触りやがって・・・」

気安く彼女に触る男を張り倒したいくらいの感情が俺を襲う。
行動の代わりに目の前の男を睨み付ける。
男は動揺する様子もなく飄々とこちらを見ているだけ。
それがまた俺のイライラに火を注ぐ。
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