サヨナラなんて言わせない
その想いだけは何があっても揺るがない。
一度過ちを犯してしまったからこそ、もう二度と道を間違えたりなんかしない。
絶対に他の男に彼女を渡したりしない。

俺は強い意志で男を見据えた。
男も俺を真っ直ぐに見ている。

互いに絶対に譲れない想いがある。

オロオロする涼子も気にとめず、俺たちはしばらく睨み合いを続けた。




とてつもないピリピリとした緊張感が走る。

一体どちらが先に動くのか。

これ以上ないほどに空気が張り詰めていた。




その時。



「・・・・・フッ」

鼻から抜けるような声がした。
と思ったら。


「あっはははははははは!・・・・あ、すいません、可笑しくて」


目の前の男が突然腹を抱えて笑い始めた。
あまりに突然のことにすぐに言葉が出てこない。

・・・・ふざけてるのか?
ふつふつと怒りが湧いてくる。
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