サヨナラなんて言わせない

吹く風がすっかり心地よくなってきた10月。
涼子との関係が修復されてから半年以上が過ぎ、
そして俺たちの結婚式まであと1ヶ月を切っていた。

2次会の幹事をカナと岡田、そして涼子の同期メンバーが買って出てくれたのだが、どうせなら一度皆で酒でも飲もうという話になりこの日を迎えた。

・・・だが中村まで同期会メンバーに入っていたというのはやはり聞き捨てならない。今までもこうして接点があったかと思うと、よく涼子は彼に振り向かなかったものだと心底ほっとする。この手のことになると、過ぎるほど鈍感な彼女にこの時ほど感謝したことはない。
あいつが言うには機が熟すのを待ってから攻めるつもりだったらしいが、もし俺との再会の前にあの男が動き出していたらと思うと・・・・・・・・・いやいや、それでも彼女は俺のところに戻って来てくれた。

・・・と信じよう。



「でも涼子の忘れられない男がまさか今話題の人だったとはねぇ~」

居酒屋に移動した俺たちは各々酒を頼んで乾杯すると、すぐにその場は砕けた雰囲気に変わった。中でも涼子の同期の菜摘さんという女性は俺を知っていたらしく、俺の姿を見るなり驚きで固まっていた。

「でも彼がそんなに有名人になってたなんて、私全然知らなかったし・・・」

「将来有望なエリート若手といいイケメン建築士といい・・・・なんで涼子ばっかりいい男が寄ってくるのよ~!!」

既に酔いが回ってきているのか、彼女はくだを巻いてテーブルに突っ伏してしまった。
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