サヨナラなんて言わせない
「ちょっと、菜摘・・・!今日ペースが速すぎるわよ」

「いいのよっ、飲まなきゃやってられないのよぉ~~!」

そう言うと今度はオイオイと泣き出してしまった。彼女は泣き上戸なのだろうか?

「ご、ごめんなさい!彼女ちょっと辛いことがあったばかりで・・・」

涼子はそう言って頭を下げると菜摘さんの頭を自分に引き寄せて撫で始めた。彼女はすぐに涼子にしがみつくとさらにしくしく泣き始める。

「涼子ぉ~!!私を置いてお嫁に行かないでぇ~~!!」

困り果てた涼子は苦笑いしながら背中を摩り続けている。他の同期メンバーはやれやれといった感じで特段驚いた様子もなく、どうやらこういうことは珍しいことではないようだ。

「何があったの?」

俺たち3人全員の疑問をカナが代表して投げた。

「男に振られたんですよ。菜摘は駄目になるといつもこうなるんです。俺たちにとってはもう日常茶飯事ってくらいによく見る光景なんで驚きません」

そう言って同期の一人の男がハハッと笑った。

「内藤ぉ~!それ以上言ったらぶっ飛ばすっ!!」

泣いていた彼女がガバッと体を起こすと今度は内藤と呼ばれた男の首にぶら下がった。そのあまりに早い変わり身にその場にいた誰もが笑い転げた。
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