サヨナラなんて言わせない
それからしばらくてんやわんやがあったものの、彼女もようやく落ち着きを取り戻したのか、あらためて噛みしめるように呟く。

「でもほんと、涼子が羨ましいわ・・・・こんなに一途に想われて。・・・・別れてる間一度も心移りしなかったんですか?」

彼女が俺に尋ねると、一斉に全員の視線が俺に集まる。・・・・涼子以外は。

「ないですね」

「ただの一度も?」

「ないです」

「でもその見た目なら女に言い寄られることはありましたよね?それでも?!」

何度答えても食い付いてくる彼女に思わず苦笑いが零れる。

「全くないですね。彼女と離れてる3年はとにかく必死でしたから。少しでも早く涼子の元に行けるようにってそれしか考えてませんでした」

「おぉ~っ、言いますねぇ!」

同期の男がヒューッと口を鳴らす。

「ね、ねぇ!もうその話はいいからさ、2次会の話をしようよ!」

恥ずかしさに耐えられなくなったのか、涼子が慌てて話題を変えようと割り込んできた。

「バカね、涼子!こういう話こそ2次会で使えるんでしょう?!もっと根掘り葉掘り聞かせてもらうわよっ」

「うぅっ」
< 305 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop