サヨナラなんて言わせない
「また何の抵抗もしなかったの?」

唯一の男友達である司が心配そうに擦り剥いた膝を覗き込んでくる。
昨日帰りがけに突然後ろから罵倒しながら突き飛ばされた。

「抵抗したところであいつら調子に乗るだけだから。こっちがそうなるのを待ってるんだよ。だったら無視するのが一番」

「でも・・・・」

「バカの相手するために自分までバカになる必要なんてない。僕はこれでいいの」

なおも心配そうな顔をしたままの司にニッと笑顔を見せる。


司は少し前まで住んでいた団地で一緒だった幼なじみだ。
なんとなく気が付けば一緒に遊ぶことが増えていて、
いつの間にか自分にとって唯一の男友達となっていた。
中学校に上がった今でもその関係は変わらず続いている。

司は頭が良くてスポーツ万能で、男女問わずに人気がある。
でも彼もどこか人を寄せ付けないところがある。
それは彼の家庭環境に原因があるようだった。



・・・・・自分と同じ。
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