サヨナラなんて言わせない
俺が彼女と付き合い始めたことは学校中で騒ぎとなった。
そりゃそうだろう、一部でゲイだと噂されていたんだから。
騒動に巻き込んで申し訳ないと思ったが、予想に反して彼女は全く気にしていないようだった。

最初こそ戸惑いがあったが、彼女と過ごす時間はとても穏やかで楽しく、
恋愛不信に陥っていた俺の考えを少しずつ変えていってくれた。

初めて女性と手を繋ぎ、
初めてのキスをし、
そして・・・・初めて女性の体を知った。

時間の経過と共に彼女への思いは深いものへと変化していった。



だがつきあい始めから半年を過ぎ、最後の高校生活を送っていた頃から彼女に妙な違和感を感じるようになった。
具体的に何がと言われてもうまく説明できない。
ただ、己の第六感が何かを訴えているような、そんな気がしていた。

「私にはわからないけど・・・そんなに気になるなら彼女に聞いてみたら?」

奏多はそう言ったが、一体何と言えばいいのか。
自分でも説明がつかないこの胸のざわつきを、彼女に直接聞くことなどできやしなかった。
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