サヨナラなんて言わせない
***

「ど、どうしたんだよ?!その顔・・・」

開口一番司が驚愕の顔でこちらを指差した。

「・・・・・ちょっとね」

「・・・・そっか。ちゃんと冷やせよ」

曖昧に言葉を濁して何も語ろうとしない自分に司はそれ以上追求してこない。
互いに複雑な家庭で育った者同士、人には言いたくない・・・言えないこともある。
それがわかりすぎるからどちらも必要以上に踏み込むようなことはしない。




あの翌日、出張から帰ってきた父親にいきなり殴られた。
それはもう本当にいきなりだった。

『具合が悪いお前を心配した母親を突き飛ばして暴言を吐くなんて何て奴だ!!恥を知れ!!』

転がった体にそんなセリフが降ってきた。
顔を上げると父親の後ろには満足そうにほくそ笑んでいる醜い女の姿。


・・・・なるほどね。
そういうシナリオになったわけか。

この女も大概だけど、事実確認を実の息子にすることもなく一方的にこっちが悪いと決めつけてかかった父親に対する嫌悪感はさらに大きなものとなった。

所詮似た者同士ってことか。
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