サヨナラなんて言わせない
「・・・司?どうしたの?こんなところに呼び出したりして」

次の日の放課後、俺は誰もいない視聴覚室へと由梨を呼び出した。

あれから一晩中、己の見た光景が頭から離れなかった。
自分が最近感じていた違和感の正体はあれだったのだろうか。
考えては答えの出ない迷路に入り込んでしまい一睡もできなかった。

見てしまった以上そのままにしておくことなどできない。
俺はすぐに行動に移した。

「ねぇ、聞いてる?」

頭一つ分下から見上げる仕草は、少し前の俺ならドキドキしていただろう。
だが今の俺は自分でも驚くほど冷静だった。
俺は無言で由梨を見ると、少し間をあけてゆっくり口を開いた。

「昨日何してた?」

「えっ・・・?だから、親戚の叔父さんのお見舞いに行かなきゃいけないって・・・」

「叔父さんはラブホテルに入院してるのか?」

俺の放った言葉で由梨の顔が凍りついた。激しく狼狽えているのがわかる。

「つ、司・・・?何言ってるの?何の冗談?いくら私でも怒る・・・・」

「昨日、由梨のすぐ後ろにいたんだ。偶然だったけど。お前は茶髪の男と腕を組んでキスをしながらホテルの中に消えた。違うのか?」

サーッと由梨の顔が青くなっていく。
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