サヨナラなんて言わせない
「どういうことなんだ?」

「ち、違うのっ!あいつとはそんなんじゃなくて、あれはっ・・・」

由梨はパニックを起こしながら必死で何か言い繕っている。
俺の腕に体を密着させて胸を押しつけるようにしながら。
だが俺の耳には何も入ってこない。

・・・・俺の知ってる彼女はこんな人間だっただろうか?
俺が好きになったのはもっと物静かで清楚な女の子だったはずだ。
・・・・それともこれが彼女の本当の姿だということだろうか。
昨日見た彼女は俺の前では見せたことのない表情を見せていた。

「・・・・・だから誤解なの!だからそんなことは忘れて・・・ねっ?」

そう言うと由梨は突然背伸びをして目を閉じた。

・・・・・・何だ?
この状況で何故そうなる?
俺に何をしろと?それで全てチャラにしろと?



その瞬間、俺の中で一気に何かが弾けた。



「・・・・・・・・司・・・?」

待てど暮らせど何のアクションもないことに痺れを切らしたのか、
由梨は目を開けてこちらの様子を伺っている。

「もう由梨とはつきあえない」

俺は静かにそう告げた。
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