サヨナラなんて言わせない
「え?・・・あぁ!私なら全然大丈夫ですよ。そんな相手いませんし」

あははっと豪快に笑う。
・・・・本当に?
彼女のように魅力的な人なら言い寄ってくる男だって絶対いるはずだ。
二重の大きな瞳に肩にかかるほどの髪は地毛らしいが少し茶色がかっていて、小柄ながら全体のバランスの取れたスタイルは、少し日本人離れして見える。可愛らしくも綺麗でもある、そんな不思議な魅力のある女性だ。
それにこの明るい性格と人の良さ。普通に考えてもてないはずがない。

「欲しくないの?」

「う~ん、そういうわけでもないんですけど、そういう相手に巡り会えてないというか。無理して作りたいとも思いませんし、そのうちでいっかなって。そういう南條先輩はどうなんですか?真帆先輩から凄くもてるって聞きましたよ?」

その言葉にドキッとする。

「俺は・・・俺もそんな気になれなくて。いくら言われても自分がその気にならないんじゃ意味ないからね」

「あ~わかります!私も同じです。ふふっ、私たちって似た者同士かもしれませんね」

「・・・・そうだね」

笑いながら彼女が誰のものでもないことに心底喜んでいる自分がいた。
当然彼女は俺のことも何とも思っちゃいない。
それでも、今一番身近にいる男は俺だろうということは彼女を見ていれば何となくわかっていた。

この頃の俺は既に自分の気持ちを自覚し始めていたのかもしれない。
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