サヨナラなんて言わせない
俺の真っ直ぐな言葉に彼女の頬が夕焼けのように朱に染まる。

「え、あ、あの、私っ・・・・」

「涼子が俺のことをまだそういう対象で見てないのはわかってる。でもこのまま卒業して涼子と離れたくないんだ。他の男に涼子を取られるのも嫌だ。生まれて初めてなんだ、こんなに誰かを欲しいと思ったのは。だから・・・俺と付き合って欲しい。涼子となら俺はいつも笑顔でいられるんだ」

「先輩・・・・」

真っ直ぐに彼女を射貫く俺の視線に戸惑いながらも、彼女は決して目を逸らそうとはしない。互いに見つめ合ったまま時間が止まる。
とても長い時間のような、一瞬のような、不思議な感覚に包まれる。
やがて沈黙を破るように彼女が口を開いた。

「・・・・はい。私も司先輩と一緒にいるだけでいつも心が穏やかになります。こんな私でよければ・・・よろしくお願いします」

そう言って彼女はゆっくりを頭を下げた。
俺はその一連の動作がまるでスローモーションのように見えた。

・・・・・・本当に?
受け入れてくれた?・・・・この俺を?

「先輩・・・?聞いてますか?」

涼子は俺の顔を覗き込みながら手をひらひらと揺らしている。
さっきとまるで逆じゃないか。
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