サヨナラなんて言わせない
君が遠い
ガチャガチャ、バタンッ!
「涼子さんっ!!」
駆け込んだ室内は真っ暗闇で、カーテンの隙間から差し込む月明かりでかろうじてぼんやりと中の様子が伺えるだけだった。
人の気配はおろか、物音一つ聞こえてこない。
「はぁはぁ、まだ帰ってないのか?一体どこへ・・・・?」
そこまで考えて先程の涼子の言葉が脳裏をよぎる。
『大人の付き合いっていうか。楽なの』
「まさかあの男のところへ・・・?」
その可能性を考えて息ができないほど胸が締め付けられる。
だが俺に悲しむ資格なんてない。
それどころか、彼女をあんな風に変えてしまったのは俺の責任だ。
真っ直ぐで、いい加減なことは絶対にしない、そんな誠実な女性だった。
そんな彼女がきちんと付き合いもせずに体だけの関係を持つなんて・・・・
信じたくない。
でもそれが現実なのだ。
俺が変えてしまった。