ひとひらの雪
突然背後から聞こえた低い声。思わず上げかけた悲鳴は大きな手のひらによって塞がれた。
「っ!?ーーっ!!」
「騒ぐなよ。オレのこと、覚えてないか?」
「!?」
恐る恐る斜め後ろを振り返る。聞いたことがあるようなないようなその声の主は、月光に照らされ不適に微笑んでいた。
──日に焼けたような黒い肌、切れ長の瞳。もしかして…。
「…久、遠…くん…?」
狂暴さを秘めた鋭い眼光に射抜かれ、奈々の全身は震え出していた。
「………?」
夕飯をご馳走になり琥太郎の妹・陽菜と遊んでいた雪姫はふいに何かを感じ、辺りを見回した。
「雪姫ちゃん、どぉかしたぁ?」
「へっ?あ、何でもないっ。続きやろっか!」
「うんー!」
とは言え完全に劣勢に陥っているオセロの板状を眺めながら雪姫はやはり首を傾げる。
──何か今、嫌な感じがしたんだけど…気のせいかなぁ?
最近色々なことが起こり過ぎて過敏になっているのかもしれない。そう結論付けて二枚ひっくり返すと一列全て取られ、全面真っ黒になってしまった。