ひとひらの雪




 その頃。爽北警察署の窓口に一人の少年が訪れていた。


「──あのー、すみません。」


「はい、どうしました?」


 受付の女性が促す。少年は数秒何かを考えるような仕草を見せた後、徐に口を開く。


「……僕、見たんです。4日前に西沈で…」


 唾を飲み込む音が聞こえそうな緊迫感。手に汗握り、確かに少年は言った。


「…逃げていく犯人の姿を、見たんです…!」















 もうこの時、歯車は動き出していたんだ。わたし一人じゃどうにも出来ない程の力で。


 それぞれの運命や想いが複雑に絡み合い一つの悲劇へと向かう。あの夏の日の激流のように、わたしやみんなの大切なものを飲み込んで。


 ねぇ…晴流、斗真。どうすれば良かった?どうすれば正解だったのかなぁ?


 今でもね、分からないの。どこで始まったのか、どこで狂ったのか。分からないんだ。















どうしたら、誰も死なずに済んだ………?





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