ひとひらの雪
第四章 蜃気楼
いつからだろう。何故だか毎晩同じ夢を見るようになったのは。
どこまでも真っ白な雪原の真ん中で誰かが声を押し殺して泣いている。手を伸ばしてもその肩に触れることは出来なくて、ただただ見ているしかなくて。
そしてもどかしさのあまり握りしめた拳から一滴の血が滴り落ち、辺りを漆黒の闇に染めてしまう。
そんな、酷く苦しい夢。それは何かを訴えるように少しずつオレの心を蝕んでいく。
けれど、気づいたんだ。これはきっと──あいつの見ている世界。
刻む時を失ったあいつには今この状況を変える術はないから。だから、オレにこの光景を見せたんだろう。
──分かってる。
自身が蒔いた種だ。逃げるつもりはない。必ずまたみんなで笑いあえる日々を築くよ。
──だから、雪姫。
少しの間だけ、さよならだ。