ひとひらの雪


 まして夏休み中の今事件のことは校長と教頭、そして担任の灰原しか知らない。混乱を避ける為、当分の間他の教師や生徒達には伏せておくらしい。


 それなのに児嶋はまるで死霊に出会ってしまったかのような強烈な反応を示した。


──犯人じゃない。けど晴流が刺されたことは知ってる…?


 そんな矛盾が存在するとしたら。それは…。


「………あっ!!!」


 突如大声を出すと、その場に居た全員の肩がビクッと跳ねた。


「ど、どうしたのぉ…?」


 若干怯えた様子で尋ねる琥太郎に、雪姫は瞳を輝かせて言う。


「ねぇっ、児嶋先生、事件の目撃者ってことは考えられない…!?」


「え?」


 知らされていない出来事を知っている。それはつまり、
......
直接見ていたからではないだろうか。


「わたしの勝手な推測だけど、もし本当にそうだとしたら…琥太郎達の疑いが晴れるかもしれないよ…!」


 犯人が判明し逮捕されることがベスト。しかし雪姫にとっては友達が無実だと証明されるだけでも大きな、そして大事な一歩だ。



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