ひとひらの雪
....
『ええ、一番最初に調べましたよ。』
鳩山は少し間を空け、そして言った。
『警察はまず──前科のある人間を洗いますから。被害者の知人とその身内を。』
「…っ!?」
雪姫は驚きのあまりケータイを落としそうになった。久遠蓮のことは知っていたがしかし、児嶋も罪を犯したことがあるだなんて。
──とてもそうは見えなかった。いつも何かに怯えているようなあの態度は、むしろ…。
思考に耽る雪姫に鳩山はしかし、と続ける。
『久遠はその時間父親と口論しているのを近隣住民に目撃されていますし、児嶋も学校に居たそうで。早々に対象から外したんですよ。』
「そうですか…」
『まあ、後は我々にお任せ下さい。あなたが元の日常に戻ることがお兄さんを安心させることに繋がりますから。』
「…はい。」
通話を終え、部屋には再び静寂が戻ってきた。しかし頭の中は混乱しなかなか収まってはくれない。
琥太郎達の疑いは晴れた。久遠蓮にはアリバイが有り犯人には成り得ない。これ以上捜査に深く関わる必要などないというのに、何故こうも胸の奥がくすぶるのだろう。