ひとひらの雪
ふと浮かんだのは昨夜の出来事。尋常ではない児嶋の表情、叫び。
──そうだ。まだ分からないままなんだ。どうしてわたしを見て動揺したのか。
事件当時のアリバイがある。それはつまり児嶋は目撃者ではないということ。そうすると今まで立ててきた推測とは大きく食い違ってくる。
「…きっと何かあったんだ。28日以前に、晴流との間に…!」
それが何かは分からない。もしかしたら事件とは全く関係のないことかもしれない。けれど、それならそれでいい。
後悔した時には遅いということを、雪姫はよく知っている。
──それに、ちょっと気になるんだよね。
インターホンの鳴る音がする。琥太郎が迎えに来てくれたのだろう。
部活用のボストンバッグを担ぎ玄関へと早足で向かう。その最中、ふと思った。
──あの時の児嶋先生の顔、似てるんだ。6年前、小学校に転入してきた頃の琥太郎に…。
長い間忘れてしまっていた記憶。琥太郎にとっては一生の傷であるそれ。児嶋も
....
同じものを抱えているのだろうか。