ひとひらの雪
そのまま窓辺へと移動する。そして、広げたシートを翳すと…。
「あ…っ」
窓に空いた風穴とそれの大きさはピタリと一致していた。
「…空き巣がよく使う手段なんだけど、ガムテープを貼った上からガラスを割ると音が小さくて済むんだ。きっと小説やテレビで知ったんじゃないかな。」
「部屋の中は衝立で見えない上に、あまりに予想外のことでしたので…」
それはそうだ。誰が想像しただろう。警察に護られている殺人未遂事件の被害者が、危険を承知で脱走を図るなんて。
雪姫はガラスの縁に触れないようにそっと窓の下を眺めてみた。そこは病院の通用口のようで、建物から迫り出すように平たい屋根が設けられている。つまり、この三階と一階の中間にはワンクッションあるということ。
多少の度胸とそこそこの運動神経さえあれば飛び降りられる高さ。そして先程の方法で侵入し人一人抱えて飛び降りることは出来ない高さだ。
──晴流は本当に、自分の意志でいなくなったんだ…。
"どうやって"は分かった。しかし"何故"、今脱走をする必要があるのだろう。それだけが分からない。