ひとひらの雪
鳩山は眉間に皺を寄せ深く考え込んでいた。すると、不意に背後から声が。
「あのぅ…そろそろ病室片付けてもよろしいでしょうか?」
申し訳なさそうな面倒くさそうな顔をして現れたのは看護士だった。手には箒とチリトリ、ビニール袋が握られている。
「え?…ああ、お願いします。」
雪姫に現状を伝え気がついたことを問おうと、頼んで病室をそのままにしておいてもらっていた。しかしもうその必要はない。
手際良くガラス片を片付けていく様を横目に立ち去ろうとし、ふと足を止めた。
「すみません。少々お尋ねしたいのですが。」
「?何ですか。」
「…一年前、天城晴流くんの治療を担当した医師は今いらっしゃいますか──」
病院の外へ飛び出してすぐケータイに着信があった。こんな時に誰かと表示を確認し、雪姫は「あっ」と言葉を詰まらせる。
『──もしもし、雪姫ちゃん?どうかしたのぉ?学校に着いたら"もう帰ったよ"って言われちゃって…』
「あ゙ーっ、ごめん琥太郎!」
ジャージのまま飛び出す程慌てていた為に、琥太郎に連絡することを忘れてしまっていた。