ひとひらの雪


 わざわざ毎日迎えに来てもらっているというのにとんだ仕打ちをしてしまった。


 罪悪感に打ちひしがれる雪姫。しかし只ならぬ雰囲気を悟ったのか琥太郎は一転問い掛ける。


『…何か、あったの?』


 雪姫は一瞬悩んだものの晴流を捜すには彼を知る者の協力が必要と判断し、事情を話した。


『…そんな、晴流くんが…』


 事情を知った琥太郎の動揺は電話越しでも伝わってきた。当たり前だ。実際に病室の惨状を見てきた雪姫でさえ未だに信じられない思いでいるのだから。


 自分を殺そうとした相手に会って無事で済むとは思えない。第一、晴流は犯人の顔を見ていないと聞いた。あれは嘘だったのか。


──それ程までに隠したかったの?この事件の真実を…。


"警察が真実に辿り着く前に"


 書き置きには確かにそうあった。それはつまり、晴流がすぐさま行動を起こしていることを表している。


「…時間がない。見つけなきゃ、晴流を。犯人と接触する前に…っ」


 晴流の強い意志を尊重したいのは山々だが、あまりに危険過ぎる。止めなければ。


『うん…!僕も手伝う。とりあえず雪姫ちゃんの高校と僕らの高校の辺りから…っ』


「お願いっ」



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