ひとひらの雪
しばらくして、頭に巻いていた手拭いを外した琥太郎はホッとした様子で言った。
「よし、綺麗に張れたねぇ。」
空いている場所を確保し組み立てた二つのテントは、中学生だけで準備したとは思えない出来映えだ。
「いやー、器用な人が3人も居てよかったねっ!」
「「本当だよ。」」
疲れきった顔の晴流、奈々、琥太郎の声が重なった。心なしか雪姫と斗真に痛い視線が注がれている気がするが、二人はスルーした。
「んじゃ、夕飯の確保にでも行くか。」
「そうね。」
肉や野菜は持ってきたのだが、せっかく川があるのだから魚も釣ろうという話になっていた。食欲旺盛な年頃、問題はない。
キャンプ場の管理人に予め聞いた穴場は水の良く澄んだ渓流で、釣り竿などなくても捕れそうなくらい浅瀬にも魚が泳いでいる。
五人は適当な石に腰掛けて糸を垂らしながら他愛もない話をした。
中間テストで赤点の教科があったこと。奈々の家で犬を飼い始めたこと。妹が描いてくれた似顔絵に琥太郎が号泣したこと。来月のバスケの大会のこと。
時が経つのも忘れるくらい、楽しかった。