ひとひらの雪


 そうしなければ雪姫と晴流は"自分"を保てなかった。きっと世間を恨んで生きていただろう。


二人だから我慢出来た。
二人だから笑えた。


「気がついたら、お互いの存在に依存してた。…不安なんです、一人で居ることが。独りきりになることが。」


 酸素の無い地上で、水の無い海で、光の無い闇で。生きることは出来なくて。


──わたしは、本当に甘えてばかりだ。


 雪姫は俯き、自嘲気味に微笑む。すると今まで黙って聞いていた鷺沼が徐に口を開いた。


「…おかしくなんてないよ、誰かを大切に想う気持ちは。ただ…」


「ただ?」


「…自分は"独り"だなんて言っちゃダメだよ。杉崎くんや川瀬さん、それに峰村くんだって、君達を想っているんだから。」


──あ…。


 言われてハッとする。そう、今は昔とは違う。


 琥太郎が、奈々が、優真が居てくれる。自分を支えてくれるひと達。護りたいひと達が。


「だから兄妹揃って一人で抱え込まないこと。
今夜は警察が捜索を続ける。それでも見つからなかったら、明日そのみんなで捜せばいい。」



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