ひとひらの雪


 周りに心配を掛けまいとずっと肩肘張っていた。けれど、いいのだろうか。もう少しだけ、友達や他人に頼っても。助けを求めても。


「──さあ、とにかく今日はもう帰って休んで。未成年の外出は夜11時までだよ。」


「…はいっ」


 ベンチから勢い良く立ち上がり、夜の空気を思い切り吸い込む。


「後2時間頑張ったら帰ります!」


「…頑固だね…」















 しかし結局、その日晴流が見つかることはなかった。


 どこかで殺傷事件が起きたという報告もない為、雪姫と琥太郎はとりあえず帰宅することにした。


──晴流くん、大丈夫かなぁ…?


 雪姫を送り届け、明かりも疎らな帰り道。琥太郎は俯き溜め息を吐きながら歩く。


 小学生からの付き合いである琥太郎にとって、今回の脱走事件は腑に落ちないものだった。


 どんな理由があれ、いつもの晴流ならこんな荒い方法は取らない。警察に事情を話して説得するか、雪姫にだけ伝えるかくらいはしたはず。

    ......
未だ謎の1年前の真実というものが、彼の冷静さを奪ったのだろうか。



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