ひとひらの雪
──どうしたんだろう?
昨夜別れた時まではいつも通りだったのだが、今朝からずっとこの調子だ。考えられる原因と言えば…。
「…ごめんね。」
雪姫から突然の謝罪の言葉。それに対し琥太郎は立ち止まり目を丸くする。
「えっ?なんで謝るのぉ?」
悪い事をして叱られている子どものように、雪姫はシュンとして呟く。
「…琥太郎、元気ないから。お店の手伝いや部活があるのに毎日来てもらってるし、何時間も一緒に晴流を捜してくれて。疲れちゃったんだろうなぁ…って思って。」
雪姫は至極申し訳なさそうに俯き、もう一度"ごめんね"と呟いた。
「え…違うよっ?僕元気だし、全然苦じゃないから…!今、ちょっと考え事してて…こっちこそ心配掛けてごめんねぇ。」
琥太郎はとっさに微笑んでみせた。雪姫のように上手くは出来ないけれど、少しでも安心させたくて。
──どうしよう。やっぱり雪姫ちゃんには話した方がいいのかなぁ…?
琥太郎は昨夜晴流から掛かってきた電話の内容についてずっと思い悩んでいた。
『目撃者を信用するな。
…雪姫を、頼む。』