ひとひらの雪
間違えないように慎重にケータイのボタンを押していく。そして3コール目。
『──はい、鷺沼。』
「あ…っ、お疲れ様です!お忙しい中すみません!あの…杉崎です!」
相手は鷺沼刑事。初めて警察関係者に電話を掛けるという緊張と上手く話せるかという不安から声が上擦ってしまう。
『ああ、どうも。何か手掛かりはあったのかい?』
「いえ、その、ちょっと聞きたいことがありまして…」
一度大きく深呼吸し、琥太郎は意を決して切り出した。
「…晴流くんの事件の目撃者が誰なのか、教えてくれませんか…?」
数秒の沈黙。琥太郎からの唐突な質問に鷺沼も戸惑っているようだ。しかし…。
『…そんなことを聞いてどうするつもりだい?一応個人情報だから、口外は出来ないことになってるんだ。』
「え…」
考えてみれば当然。警察関係者でも被害者の身内でもない、むしろ一度は容疑者候補として扱われた人間にそんな情報をくれる訳がないのだ。
しかし晴流からのメッセージを無にしてはいけないような気がして、琥太郎はとっさに言った。
「あのっ、そこをなんとか…!もしかしたら、その…知ってる人かもしれないんです…!!」