ひとひらの雪


「…雪姫ちゃん…」


 早くも聞き込みを終えたのだろうか。俯いていた顔を上げれば、大好きな太陽の笑顔。不安に押し潰されそうになっていた心はそれだけで救われた。


 しかし、それは一瞬で崩れ去る。


 小走りで駆け寄ってくる雪姫。その背後には、噂の人物の姿が在ったのだ。


──どう、して…?


「…ゆ、雪姫ちゃん…その人…は…っ」


「ん?あっ、そうそう!」


 何も知らない雪姫は無邪気な表情を浮かべたまま背後を振り返り、琥太郎に紹介する。


「彼はね──茨木湊人(イバラキ ミナト)くん。晴流の事件の目撃者なんだって!こんな所で会うなんてすごい偶然だよねっ」


 すると少年・湊人は琥太郎と視線を合わせ、驚きの声を上げる。


「あれ、もしかして…コタロー?杉崎琥太郎!?うわー、久っしぶり!」


「…っ!!」


「えっ、二人って知り合いなの?」


 雪姫は二人を交互に見合い疑問を口にした。それに対し湊人はニコニコしながら答える。


「うん。小学校の同級生なんだ。小4になる頃コタローは転校してったんだけど…」


「じゃあ友達の友達なんだね!わたしと琥太郎4年生からの付き合いなのっ」


「へー、そうなんだ!」



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