ひとひらの雪


 この場に残るか琥太郎の手伝いに行くか、迷うようにキョロキョロする奈々。そんな様子を見て、晴流は優しく声をかける。


「…座ったら?」


「あ、うん!」


 晴流の隣にちょこんと腰掛け、しばし無言で雪姫達を眺めた。


「だーっ、もう!見えてんだから素手のが早ぇだろ!」


 痺れを切らした斗真はTシャツを脱ぎ捨て、ザブザブと川へ入っていく。


「わたしもーっ」


 後を追うように参戦する雪姫。最早ただ川遊びをしているようにしか見えない。


 忙しなく跳ね返る水音を聞きながら、ふいに奈々が口を開いた。


「…ねぇ、晴流くん。」


「ん?」


「雪姫ってさ…斗真のこと、好きなのかな?」


 風が吹いた。奈々の長くて茶色い髪が揺れ、切なげな横顔が覗く。晴流はそれを一瞬見つめ、視線を逸らす。


その質問がlikeの意味ではないことくらい、分かっていた。


「そういう風には…見てないと思う。雪姫は俺達4人全員、きょうだいみたいに大切にしてるよ。」


 数秒の間を空け、そっと頷く。


「そう…そうね。」


 初めから答えなど分かっていたのだろう。すぐにいつもの表情に戻った。



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