ひとひらの雪


 湊人は琥太郎にだけは本当の自分で接してくれた。皮肉気に引きつった、しかし心からの笑顔で。


──僕はそのことにちょっとした優越感を覚えていたんだと思う。だから気づけなかったんだ。この友情が壊れていく、その音に…。


 ある日の朝、いつも待ち合わせしている場所に湊人は来なかった。


『あれぇ、今日湊人くん日直だったっけ…?』


 しばらく待ってみたが来ない為、琥太郎は仕方なく一人で小学校へと向かった。


 教室に入ると友達と談笑する湊人の姿が。しかし琥太郎が挨拶しようとすると、サッと顔を背けてしまう。


『…?』


 何か怒らせるようなことをしてしまっただろうか、と思い返す。しかし心当たりはない。思い切って直接聞いてみようとしたのだが、チャイムが鳴った為渋々席に着くことに。


 親友である湊人の突然の変化。その謎の答えは、その後すぐに分かった。


『はい、じゃあ算数の教科書56ページねー』


 担任に促され皆一斉に机から教科書とノートを取り出す。その時。


──バサバサ…ッ。


 一際大きな音を立て、湊人の机からたくさんのものが落ちたのだ。



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