ひとひらの雪


 どうしてこんな辛い時に一番の友達である自分に相談してくれないのだろう。妙な不安に駆られ、ある日の昼休み琥太郎は湊人を裏庭に連れ出した。


『ねぇ、湊人くん…何か心当たりがあるの?』


『…』


『話してくれなきゃ分からないよぉ…!』


 友達の相談ならいくらでも聞く。相手が分かっているなら一緒に話をつけに行くし、分からなくても傍に居て助けてあげることくらい出来るのに。湊人はずっと黙り、俯いたまま。


 それがもどかしくて、琥太郎は彼の肩に触れようとゆっくりと手を伸ばす。


『湊人くん…』


すると…。


──ドサッ!


 ほんの少し触れただけ。それなのに湊人は思い切り裏庭の冷たい土に尻餅をついてしまった。


『…え?え?湊人く…』


 訳も分からずとりあえず差し出した手。しかし湊人は、それを勢いよく弾く。


『…っ触るな!!』


『…っ』


 湊人からの初めての拒絶。呆然と立ち尽くす琥太郎は走り去る彼の背中を追い掛けることが出来なかった。


──そして、気づかなかった。この光景をクラスメートに見られていたこと。みんなが犯人は僕だと疑っていたことに…。



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